こんにちはー!

今日もちゃっぴーに小説書いてもらったよ!

一旦読んでみて!

桐原湊(きりはら・みなと)は、どこに出しても恥ずかしくないイケメンだった。整った顔立ち、整いすぎた髪型、清潔な制服。

 だが、彼には決定的に欠けているものがあった。

 ――常識だ。

 高校一年の春、湊は昼休みに購買の紙コップでピラミッドを作った。友人たちは「インスタ映えする」と笑いながら写真を撮り、湊自身も「まあ、手先の器用さを示す程度の遊びだ」と思っていた。

 だが、その瞬間に彼の運命は静かに崩れ始めていた。

 2段、3段、4段。昼休みが終わる頃には、机の上にそれなりに立派な塔ができた。クラスメイトがざわつき、女子が「すごーい」と言った。

 ――その「すごーい」が、いけなかった。

 湊はその夜、寝る前に「もっと高く作れるのではないか」と考えた。

 勉強のノートを閉じ、代わりに紙コップの山を開いた。

 翌朝、家の居間には天井に届きそうな白い塔があった。母がため息をついた。

 「湊、またそれ?」

 「“また”じゃない。進化してる」

 そう言って湊は真剣な目をしていた。

 その真剣さが問題だった。

 二年生になる頃、彼の部屋は紙コップの匂いで満ちていた。インクの匂いでも、青春の匂いでもない。紙の乾いた匂い。

 「遊びじゃないんだ」

 と湊は言った。

 「この塔は、重力と紙の限界を試している」

 誰に向かって言っているのかはわからなかった。

 文化祭の出し物を決める会議で、クラスの誰かが冗談で言った。

 「桐原の紙コップタワー展示すれば?」

 その瞬間、湊の目が光った。

 「いいね、それ」

 誰も止められなかった。いや、止めようとしたが、湊の顔が真剣すぎて、誰も笑いを挟めなかったのだ。イケメンは説得力を持つ。たとえ中身が紙でも。

 湊は文化祭の三週間前から準備を始めた。放課後の体育館に紙コップを積み上げ、毎晩遅くまで残った。先生も呆れを通り越して応援していた。

 「桐原、お前、将来は建築か?」

 「いえ。紙です」

 真顔だった。

 紙コップタワーは、最初のうちは順調だった。が、10段を超えたあたりから塔は微妙に傾き始めた。湊は水平器を持ち込み、机の脚に紙を挟み、風向きを計算した。

 「重力は裏切らない。問題は紙だ」

 そう呟いた夜、体育館の電気が消えた。

 ――誰も帰っていいと言っていない。

 文化祭当日。

 体育館の中央に立った塔は、白く、そして不安定に光っていた。高さは2メートルを超えていた。

 クラスの誰もが半信半疑だった。来場者は口を開けて見上げ、スマホを構えた。

 「すげー……」

 「マジで紙コップだけ……?」

 その言葉に、湊はわずかに微笑んだ。

 その直後、風が吹いた。

 体育館のドアが開き、秋の風がすうっと流れ込んだ。

 塔は、ゆっくりと、優雅に、傾いた。

 そして――崩れた。

 紙の雪が舞った。

 体育館の床が白く染まった。

 観客は息を呑み、数秒後には笑い声が広がった。

 湊は、その中心で立ち尽くしていた。

 誰かが言った。

 「どんまい、湊!」

 その声に、彼は初めて笑った。

 「……どんまい、か」

 片付けのあと、湊は静かにコップを拾い集めた。

 「無駄じゃなかったよ」

 そう言って、崩れた紙コップの中から、一つだけ形のいいものをポケットに入れた。

 三年の春。

 進路希望調査に「建築学部」と書いた彼を見て、担任は「やっぱりな」と笑った。

 だが本人は違う。

 「建築がしたいんじゃない。積みたいんです」

 卒業式の日。

 クラス写真の後ろで、湊はこっそり紙コップを積んでいた。

 「最後くらい普通にしなよ」と友人が言った。

 「普通って、どこからが普通なんだろうな」

 湊はそう言って、塔の最上段にそっと一つを置いた。

 それは小さな塔だった。

 だが、彼の三年間の重みが確かに乗っていた。

 卒業アルバムを見返すと、彼の横には崩れかけの白い塔が写っている。

 笑うクラスメイト。

 照明に反射するコップ。

 そして、真剣な顔のままピースをしている湊。

 ――青春を棒に振った、という言葉がある。

 だが、棒で振ったのが紙コップなら、それは案外、悪くない。

しょーもない感じで僕は結構好き(笑)

しかも名前も今どきでかっこいい感じだしね(笑)

何事もほどほどにっていう教訓を後付けしておいて今日は終わりましょう!

みなさんいい夜を!

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